七梨乃手記

……あなたは手記に食い込んだ男の指を一本一本引き剥がすと、頼りない灯りの下それを開いた。@N4yuta

「ガチクラン」と「身近なフレンド」以外のゲーミングコミュニティは存在できないのか?

灯りが消えた日

www.negitaku.org

 

2018年5月にnegitaku.orgの会員制SNS機能が削除されると、それに伴って各プレイヤーの日記やスペックを含むプロフィールページ、クランリスト、メンバー募集ページが閲覧できなくなり、日本のゲーマーは所属していないコミュニティの動向はもとより、国内にどれぐらいの(少なくともクランとして活動する意思のある)コミュニティが存在しているかを観測できなくなった。これは志向の近い仲間を求めるPCゲーマーにとって、またすでに活動しているコミュニティ全体にとっても非常に大きな痛手だった。

 

現在のところ、PCゲーマーがホットな話題を観測する、または新しく参加したいコミュニティグループを探すためには、概ね下記のような手段を取ることになる。

  • トレンドの観測
  1. TwitchまたはYoutubeで配信タイトルランキング及びインフルエンサーの活動を参照する
  2. ゲームタイトルのTwitterハッシュタグでツイートを追う
  3. 5ちゃんねるのスレッドを追う
  4. フレンド間の口コミ

  • コミュニティグループへのリーチ
  1. 有志が立ち上げたタイトル毎のフレンド/クラン求人サイトを参照する
  2. Twitterハッシュタグ上の宣伝ツイートに問い合わせる
  3. (有名タイトルの場合)有志が立ち上げたDiscordのJPチャンネルへの参加
  4. フレンドによる紹介

Twitterが情報発信のハードルを下げても、Discordが気軽に同志を集めることを可能にしても、結局のところ各自が積極的なコミュニティへの参加の意思をもって草の根サーチをしない限り、他のプレイヤーと繋がることは難しくなった。

仮にそれだけのモチベーションがあったとして、積極的に情報発信をするコミュニティは大抵が週n日の参加をルールとし、特定のゲームタイトルにコミットした「ガチクラン」か、そうした制約こそないものの、やはり特定のゲームタイトルに活動を限定して、そのゲームに興味がある人々を単に集めた「エンジョイクラン」であって、それらのクランがゲームのトレンドの移り変わりと共に変化しながら生き残っていくことは少なく、タイトルが死に、また生まれる流れに付随する形でコミュニティもまた一から湧き直している。

求職活動にも似た一連のサイクルのハードルは高く、一方で一度トレンドが変わってしまえば後に残るものもない。そのため、一般的にはそうした「ガチか、そうでないクラン」にひとまず在籍した後、気の合うメンバーと個人的にフレンドの網を築いて内輪にこもるか、元々リアルで繋がっていた面子と、あくまでリアルの付き合いの延長線でゲームをプレイするようになるのではないだろうか。

 

便利なwebサービスがリリースされてきたにも関わらず、PCでまともにFPSするといえばCounter-Strike 1.6といくつかのタイトルしかなく、コミュニケーションツールはIRCしかなく、見ているサイトは誰しも一緒だった時代と比べて、ゲームを通じて様々なバックグラウンドの人と繋がるにはそれなりの労力が求められるようになり、PCゲーミングシーンはばらばらになってしまった。

国内CS界隈のレジェンド・XrayNが主催する17階級・参加チーム100以上のマンモス大会『宴』がある種の熱狂をもって迎えられたのには、国内最大の頂上決戦というフック以上に、国内のプレイヤーが一堂に会する機会を与えられたという側面も大きかったのではないか。

www.utage-csgo.com

 

「アスリートでない」ハードコアゲーマーの明日はどっちだ?

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前年比13倍の成長を記録したと華々しく報じられた国内eスポーツ市場。

雨後の筍のように「プロゲーミングシーンを支える/生み出す」様々な"サービス"や"関連プロダクト"が登場する一方で、格闘ゲームコミュニティを愛し、正真正銘のプロゲーマーとして第一線を生き続けるももち氏(忍ism)が国内のライセンス制度に対して問題意識をステートメントとして発表したことも記憶に新しい。

10代がその生々しい情熱をeスポーツに賭けようとし、早くもシェアハウスの亜種としてのゲーミングハウス物件が登場する趨勢の中で、「ただのゲーム好き」や「Steamer」として日々を送るゲーマーの中には、ガチの中のガチにだけスポットライトが当てられ、世間様に喧伝される界隈と自身の日常との乖離に違和感を感じる者も少なくない。そしてそれが更に「身内」との閉じたゲーム生活を加速させる。俺たちは単にガキの時分からそうしてきたように、友達と集まってワイワイゲームを遊んで楽しみたいだけなのだ…と。

 

 だが、オンラインゲームが持つ魅力は必ずしも「eスポーツ」や「どこでもワイワイ」に留まらない。ゲームという共通言語であり場を介して、普段の生活では決して出会うことのないような人々と出会えること、属性や出自やクラスタを軽々と乗り越えて肩を並べられるところこそがその素晴らしさではなかったか。本来余暇の楽しみでしかない活動が転じて広い世界・社会へアクセスする機会となり、様々な人間との交流を経て逆に人生のいろはを学んでしまう、そんな楽しい逆転現象こそがオンラインゲームに興じ、コミュニティを形成することの醍醐味ではなかったか。

勝負に勝ち、あわよくばマネタイズし、キャリアにできるようなチームのあり方を探ることもまた一つの切り口ではあるが、 SNSよりもより具体的に、それでいて現実よりもより気軽に「つながる」ことを楽しめるゲーミングコミュニティのあり方、そしてそれらを繋げる方法もまた、議論されなければならないのではないか?

 「ガチクラン」と「身近なフレンド」以外のゲーミングコミュニティは、本当に存在できないのか?

 

自分もまた、かつてのクランの名残の中から知り合いやそのまた知り合いを集めた小さなコミュニティを持つ者の一人だが、自分の人生は間違いなくこうしたゲーミングコミュニティで得た人脈と知見によって育まれたものであると断言できるだけに、このようなアスリートではないが今ゲームを楽しんでいる人々を繋げ、ポジティブな連鎖を再び生み出すために、どんな仕掛けや仕組みを作れば良いかを考えている。 

重要なのは、①各コミュニティグループが気軽に各々の活動スタイルや活動タイトルや活動状況や求める人物を外部に向けてアウトプットできる場があることであり、それがDiscordチャンネルを外からサポートできる窓口になること、②ゲームを通じて他者と繋がることの意義をもっと掘り下げて、ただの寄せ集めに終わらず、コミュニティとして参加者全体がポジティブな影響を与え合うための「内部のアウトプット」の仕組みを作ることなのではないかと思う。

要は、入りはサクッとしつつ、あわよくばそこで出会った人間とゲーム以外でも楽しい何か(かのデスイルミネった連中の文字通りすぎるeスポーツゲーミング企画を見よ)が生み出せるなら最高だし、そうでなくともC4LANのような志のあるコミュニティイベントに参加して、音楽好きがフェスやクラブイベントに行くような感覚で能動的かつより幅広い意味でゲームを楽しめるようになれば素晴らしいじゃないか。

 

そんな思いも込めて、ひとまずクローズドなソーシャルブックマークサービスであるveinを導入してみたりしている。

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medium.com

このサービスではブックマークページをパブリックにすることはできないが、コミュニティグループのインプットを共有化したうえで、そうして構築された情報資産を外部にアピールできれば、関心のベクトルが近い同志を呼びやすくなるし、内部でも一歩踏み込んでゲームのことを考えるきっかけにもなる。

中も外も、なるべくシンプルに一つにまとめつつ、メンバー同士のシナジーを促進する仕組みが構築できないだろうか?

そこには追う価値のある可能性があるはずで、自分たち以外にもこのトピックに興味を持ってくれる人がいればうれしい。

 

negitaku.orgがかつて引き継いだようなサービスのあり方とは必ずしも一緒にならずとも、広く、あるいはゆるやかにゲーミングを楽しむ場づくり、縁づくりは可能なはずだ。それこそが本来的な意味での"カルチャーを守る"ということなのだから。

 

自分の感受性ぐらい/自分で守れ/ばかものよ