七梨乃手記

……あなたは手記に食い込んだ男の指を一本一本引き剥がすと、頼りない灯りの下それを開いた。@N4yuta

Cyberpunk 2077: Thug's Honor

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 終わった…66時間をかけてCyberpunk 2077の一周目をクリアした。

売り方に汚いところはあれど、CD Projekt REDは世界有数のRPGインタラクティブなストーリー)の作り手であることに間違いはなく、クエストの一つ一つが人間世界の底の澱を掬うようなシニカルなブラックジョークに満ちていて、およそサイバーパンクというものに自分が求めるすべてがあった。そのポイントをいちいち論うのも無粋なので、感想代わりに一周目のリプレイをまとめたい。(ネタバレ注意)

 

V - A Hothead Street Kid, Ex-Valentinos, Self-styled "The Archangel of Street"

 性別: 女性 

 ライフパス: Street Kid

 装備: ピストル [RT-46 Burya] / ショットガン / SMG

 性的指向: バイセクシュアル

 恋人: Judy Alvarez, Ex-Moxes

 The Path: PATH OF GLORY

 

一周目は当然問答無用のストリートキッド。FPSスタイルのRPGは基本的にFPSとしてのクオリティを確かめるために射撃ビルドで一周することにしているので、マンティスブレード等のお楽しみは二週目に預けて今回は純粋に銃を使うビルドにした。

最初は一通りの銃は使えるようにビルドを組んでいたものの、途中からクリティカルガン積みで撃つリボルバーの気持ち良さから抜け出せなくなり、RT-46 Buryaシグネチャーウェポンになった。ソビエト製のとにかく大口径のエレクトロマグナム弾をぶち込むことしか考えてないバカ丸出しの巨大リボルバーで、4発の弾をリロードするのに毎回シリンダーごとロケットえんぴつの要領で入れ替える必要がある、知性の欠片もない鉄の塊である。単発威力と壁貫通以外のすべてがクソなのだが、クリティカルの倍率上昇を乗せると相手がコンクリの裏に隠れていようが5桁ダメージを叩き出すバケモノ銃で、BLAME!重力子放射線射出装置を彷彿とさせる威力を楽しめる。頭に当てれば相手が誰だろうが問答無用でいい感じに消し飛ばす、これがまた気持ち良いんだ。

 

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完全にコレ

 ストリートキッドであるVは、Valentinosの一派であるPadre(神父)の下でよく仕事をしていたが、しばらくナイトシティを離れて別の土地に機会を求めていたらしく、ナイトシティに戻ってきたところから物語が始まる。

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今回のVは全身くまなくタトゥーを彫った生粋のチカーノ。ヒスパニック系ギャングValentinosの末端で汚れ仕事をこなすサグの一人だったが、組織を離れて別の土地に機会を求め、(多分ブレイキング・バッドジェシーみたいな目に遭って)ナイトシティに逃げ戻ってきた負け犬。安物のオートピストルを持っていて、ナイトシティの伝説になることを夢見る、WATSON地区出身のごく一般的な鉄砲玉である。

 

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短気を活かした反射神経の速さと機械回り(銃の改造やピッキングなどの"実用的な"技術)に強いことだけが取り柄の馬鹿なので、帰って早々見え見えの罠にはまり、そこで後に親友兼相棒となるJackie Wellesに出会う。揃って張り込んでいた警察に捕まり、巨大企業アラサカの勝ち組社員にコンクリの靴履かせて海に沈めとけと言われるが、結局警察によって路地裏に置いていかれる。警察とギャングとしてお互いに対立する立場にあっても、同じナイトシティで生まれ育った人間として街を牛耳る大企業の連中のために片方をオモチャにすることまではしない。底辺(横)の勢力図と、街と企業という縦の断絶を明確に示す事件の後で、VとJackieは意気投合しチームを組む。

 

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VとJackieには共通点がたくさんある。元Valentinosで、安物のピストルを持っていて、ナイトシティの伝説になりたがっていて、同じぐらい馬鹿。元ギャングの末端構成員がやれることといえば喧嘩、盗み、殺しのウェット・ワークしかなく、それが結局二人にとってのすべてでもある。Vは企業の金が絡む案件は避けるが、そうでなければ金のために誰とでも何でもするし、ギグが無い時は通りがかった路地裏の喧嘩に参加したり、ギャングを殺して奪って金に換えている。警察のためのバウンティハンティングで名を上げるが、本人にしてみれば殺しに勝手に報酬が付いてくるからやっているだけのことだ。

 

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野良犬の生活は長く続かず、クズの命は短い。Vは性懲りもなくはめられてJackieを失い、頭の中に伝説のロッカー/テロリストのJohnny Silverhandを住まわせる羽目になった。Johnnyと出会ってからのVの人生は、つまるところ既に運命の決した人生のロスタイムを伸ばすための悪あがきに過ぎず、喧嘩、盗み、殺ししか知らないVが、50年前に「企業の鎖から世界を解放する」という名目でアラサカタワーに核爆弾を仕掛けたバンドマンからインスピレーションを得たとして、どれだけの変化を得ただろうか。Vは結局、ビルを爆破することが世界にもたらすことの意味や影響について深く考える前に、Johnnyとの衝突を楽しみ、”破壊”を”解放”と呼び変える遊びを学んで、どちらかが死ななければいけないなら、Johnnyに生きて欲しいと願うようになった。

 

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Delamainのコアを撃ち抜いたし、JudyのためにTiger Clawsの大御所を殺してCloudsを解放した。Maelstromとは殺し合う仲だが、一度企業相手に肩を並べて戦ったことがあり、その時に得た奇妙な友情が、自由の闘士を演じることの快楽を学ばせた。単純な生存競争とその手段としての殺しは、緩やかなグラデーションと共に「企業との戦い」と「孤独な魂に寄り添う」という「価値ある行為」に変化した。情の深い女であることがVにとっての存在理由で、それ故にJohnnyにすべてを委ねることに一片の疑いも持たなかったのだ。

 

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 結局のところ弱者の定義とは、自らの人生の主導権を握っておけない者ということなのかもしれない。互いに共通点が少なく、喧嘩ばかりしていたVとJohnnyは、しかし、最終的には夢よりも愛を重視する生き様の下に並び立って、Vは人生最後の賭けでようやく(不本意ながら)勝ちを得た。

 

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かつての友と求めた名声を得、それにふさわしい実力も持ち、ナイトシティの頂点に上り詰めたV。しかし、盲従を友情と取り違え、自傷を自己犠牲と読み替えたが故に、彼女は自分に残された時間すら"解放"し尽してしまった。Vはそれでも、ピストルを持って発つ。 友情は闘争で証明するものであり、生存は殺戮の結果として得るものであるが故に。

 

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"Just promise me one thing, asshole... You won't forget me."