七梨乃手記

……あなたは手記に食い込んだ男の指を一本一本引き剥がすと、頼りない灯りの下それを開いた。@N4yuta

2019年のゲーミングを振り返る

Switch、バトルパス、ランチャーズ

今年は入籍もしたりと個人的にも色々あったが、Switchを二台導入することで遊び方が大きく変わったり、シングル・マルチ共に次々とAAAやAAの良作がリリースされて、特にマルチはどのバトルパスを買うべきか悩んだりもした一年だったと思う(結局全部買った)。必然的に今年のタイトルといって挙げられるのはメジャータイトルばかりになってしまいあまり面白くない、というかむしろ今やってるのはホリデーセールで買った中堅どころなんだが…

2019年と言えば、Epic Gamesがユーザ囲い込みのために毎月良作を無料で配り続け、数多くのEpic専売タイトル(Metro、Borderlands 3、Outer Worlds)をリリースした一年でもあった。Epicだけでなく多くのパブリッシャが有力タイトルを自社のランチャーに縛っており、ゲーマーとしてはいちいち違うランチャーを立ち上げながらプレイしなければならないせいで忘れてしまうタイトルが出たりと迷惑千万なので、俺たちのGOGが乱立するランチャーの集約管理機能を早く実装してくれることに期待したい。

マネタイズ周りでは、F2P+コスメティック課金だけでなく、定価+DLCのバトルパス化とGaaSとして更に一歩踏み込んだトレンドになり、各社ともにeスポーツ・配信需要も視野に入れて一つのタイトルを少なくとも1年~3年以上継続的にサポートする構え。また、強気のビジネスプランを組むのは既存のIPやリソースを活用したフランチャイズものという点も見逃せない。長らくシリーズを愛するファンを狙い撃ち、ソフトの中のグッズ展開のような形でガンガン搾り取りに来ている。

このような変化に伴い、各社のサポートとコミュニケーションの質がゲームの評価の大きな部分を占めるようになってきた。あっちのタイトルはパッチがどれぐらいの頻度で当たっているとか、こっちのパッチノートは開発の意思が見えないからダメだとか、長らく希望を出している仕様は早く実装してくれだとか…

デベロッパの特に開発部門に対するユーザ側の攻撃も過激化した。その果てがApexのコミュニティマネージャによる「フリーライダー」発言なわけだが、法的にグレーな領域で割とやりたい放題稼いできたゲーム業界が、取ってきた金の分のツケを払わされているようにも見える。運営に対する不満を貯めこんだユーザがRedditに集まり、お互いに煽り合って更に怒りを加速させた結果、コミュニティが急速にToxicになっていき、それを嫌うカジュアルユーザが別のsubredditを立てて移住するなんてことも起きた。プレミアムプランを発表したFallout 76ではプレミアム加入者の家を非加入者が襲撃するのが流行したり、現実さながらの階級闘争、経済格差とそれが生む憎しみの連鎖が取りざたされた一年でもある。

Toxicなプレイヤーのセンサリングは今後の重要な課題になっていく一方、ゲーマーとしても、これらの"サービス"に課金することが過去の愛を換金するものである以上、ただの搾取される牛になっていないか内省し、そうでないならば、サービスに何を求めるかを考えながら課金の仕方を考えるべき時期に来ている。よく言えばブランドをサービスの提供側と一緒に作れるようになってきたし、悪く言えばブランド次第で穴だらけの運営に金が落ち続ける事態を止められないということ。良作大作だらけの波を乗りこなすのは簡単じゃない。

 

2019年に楽しんだゲームたち 

ポケットモンスター ソード/シールド (Switch)

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 赤をプレイして以来実に7世代越しのポケモンプレイ。Switch二台持ち・夫婦プレイの恩恵をガッツリ受けて、個人的に遊び方という意味では今年一番新しさを感じるタイトルでもあった。

ポケモンリーグをサッカーになぞらえたストーリーはとにかく人物の描写が細やか。進化した演出と相まって、単に強いポケモンを集めるばかりでなく、どんなスタイルとストーリーで勝ちたいか、なぜチャンピオンになりたいかをプレイヤーに問うような物語になっていて、ジム戦は予定調和なアンチポケモンをぶつけるのを躊躇するぐらいガチガチに盛り上げてくれた。二つの異なるエディションがあることを非常にうまくストーリーに落とし込めていて、その最たるものがもう一人の主人公であるホップだったと思う。街を出たときはまだ幼く、手当たり次第に捕まえたポケモンをぶつけてくるだけだったのが、頭打ちになって様々な組み合わせを試すようになり、最終的には「ポケモンバトル」が好きな兄貴とは違う、「ポケモン」が好きな自分の強みに気づいて、オリジナルのスタメンをきっちり鍛えて勝ち上がってくるその成長の軌跡は敵ながら応援したくなるような王道っぷり。マリィ等のライバルたちも背負うものが丁寧に語られ、人や他の生き物との関係性の先にある強さを鮮やかに描き出していた。

小学生の頃にやった初代の記憶しかない身としては、今のポケモンバトルにおけるデッキ構築の奥深さにも驚かされた。タンク・DPS・サポートの概念がここにもあったとは…今作でかなり育成のハードルは下がっているらしく、優秀なポケモンを日々レイドバトルで獲得できるので、今でもこの緩い協力プレイを求めてワイルドエリアをめぐってしまう。剣盾両方持ちなので、持ってないポケモンを二人で融通しつつだらだら協力プレイできるのが良いところ。Switchを買うなら絶対押さえて欲しい一本。

 

FitBoxing (Switch)

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任天堂ハードといえば、な健康系ゲーム。実際にやってみると、音ゲーライクなゲームの作りと、進行に応じてプログラムが変わるデイリー、達成数に応じてアンロックされるインストラクターの着せ替えアイテム等、続けやすい要素が揃っていてなかなか楽しい。しかも20分程度でしっかり汗だくになるので、無理してジムに通わずともこれとアブローラーで気軽にしっかり運動ができるようになってしまった。相当売れたのでそろそろ続編なりBGMを増やすDLCなりリリースしてほしいのだがどうなのか。リングフィットもいいけどさすがに両方やる気にはならんので。

 

Overcooked! 2 (Switch)

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最大で4人プレイができる料理パーティーゲー、というより舐めてかかると一つも星がもらえないハードコアクッキングCoop。アクションスキルもあるとよしだが何より工程の理解と目の前のタスクを最短で解決し続ける戦術眼が必要で、DOOMとかで敵の大群に囲まれている時ぐらいの脳の回転が要求される、スキルキャップの高いゲーム。誰でも理解できてすぐ始められる割に、やり込もうとすると食材を投げて片方がキャッチしたりするような高度なプレイも追求できるので奥が深い。スプラトゥーン2もそうだけど、任天堂ハードも今となってはしっかりとプレイヤースキルが求められるゲームが増えてきていることもあり、任天堂のゲームしかプレイしないような層でもガラパゴスと舐めてかかれないような時代になっているのが面白い。

 

Call of Duty: Modern Warfare 2019 (PC/Battlenet)

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文句なしに今年のGOTYに推したいCoDの最高傑作。

オリジナルのModern Warfareは、360やPS4の普及に伴って新たなFPSのプレイヤー層を開拓し、カジュアルなFPSゲームの代名詞として語られたが、それ以前の作品もプレイしてみれば、CoDというシリーズが、上辺の遊びやすさだけを追求したゲームではないことが分かるはずだ。シングルプレイは大人から子供まで、銃を持つ者と持たざる者、敢えて持つ者と持たなければならなかった者までを現代の戦争を背景に丁寧に体験させるし、秀逸なレベルデザインによって、現代戦にふさわしくない傲慢な動きは確実に処理されるようになっている。特に、現代の最大の脅威でもあるソフトスポットを狙うテロルと、軍隊が狙いにくい民間施設を盾に取ったゲリラ戦、そしてそうした未知なる状況への特殊部隊の対応を真正面から描いたのは今作が初めてではないだろうか。

マルチプレイは過去作での反省から、軽快な動作と緊張感のあるガンプレイのバランスがきちんと設計されている印象。725やM4A1等一部の銃が強いという批判があったが迅速に調整された。対戦シューターは、やはり銃が怖いものでないと退屈だと感じてしまう。一発一発食らうことの恐ろしさをCSGOで味わっているので、どうしてもその緊張感を求めてしまう。一方でRainbow 6 Siegeのようにガチガチの詰将棋になってしまうのも考え物(好きだけど)で、スピード感のある突撃と強力なキャンプとのバランスが程よく取れている今作の対戦環境のあり方が自分には一番合っているように感じる。

特に今回からはアンロックされた銃をコンセプトを変える勢いでカスタマイズすることが可能で、好きな銃を好きなスタイルに仕上げて遊べることが繰り返しプレイしてアンロックを進めるモチベーションになっている。64人対戦でわちゃわちゃやっても良いし、TDMドミネーションでカジュアルに、S&Dやサイバーアタックで試合らしくと多い人口をフル活用した遊びの幅の広さがありがたい。非常に評価が高い作品になったので、今後も継続的にサポートしてもらいたい。

 

Fallout 76 (PC/Bethesda Launcher)

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Fallout 76ほどファンに愛されて、同時に運営の手落ちとバグのために憎しみを買ったオンラインゲームは今年なかったと思う。Fallout 3の華々しい成功以来、TESと並び立つベセスダの柱として着々とファンを増やしてきたシリーズのリソースを使ってMMORPG化したこのタイトルのコンテンツそのものは、エンドコンテンツの貧弱さこそあれ、ただ放浪するだけで驚かせてくれる豊かなフィールドのディティール、中毒性のあるガラクタ漁りと人間・装備のカスタマイズ等、Falloutが持っている素晴らしい要素をオンラインで他人と共有できることもあり、3か月の間はこれ以外のゲームを忘れさせるぐらいに楽しかった。更に往年のファンが積極的にロールプレイを行うゲームでもあり、Vaultを出てきたばかりの初心者を導くNPC役を買って出るプレイヤーも少なくない(自分も新キャラ作った時に出会った)。プレイヤーベンダーやイベント等でプレイヤー同士の交流に価値が生まれてからは、こうした良質なコミュニティのバックもあり、MMORPGとしてオリジナルの輝きを発していたし、何よりも、核戦争の果てにとっちらかった廃墟の片隅で、例えば崩れた高架の中にバーをこしらえたり(画像)できるキャンプシステムはこのゲームでしか味わえない楽しみだった。 

 貴重なアイテムが消滅するバグ、アイテムコピーができるバグ、他人のインベントリから奪えてしまうハック、NPC追加コンテンツの延期等、致命的なエラーの連発と都合の良いところにしか反応しないバッドコミュニケーションの果てに最も醜聞を広めたのもこのタイトル。同じくFalloutシリーズを長年愛したものとして、長年のプレイヤーベースを散々コケにした挙句のプレミアムプランの発表は流石に付き合いきれずにアンインストールした。当時はRedditでも連日、ベセスダの旧い旧いファンや、限りなく内部に近い関係者の告発や嘆きが相次いでおり、運営を止めさせるためには課金すべきではないが、同時に同じようにシリーズを愛してきた友人たちと会うにはここしかないというジレンマが世界中のプレイヤーを苦しめた。最終的には、大部分のプレイヤーが10月までにこのゲームを去っただろう。来年のWastelandersのアップデートの後にどれだけ変化があるかがこのゲームの命運を決めることになることは間違いない。

 

Wolfenstein: Youngblood (PC/Bethesda Launcher)

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 2019年までのトレンドといえば、過去のIPのリブート版の成功もある。TOMB RAIDER三部作も見事な出来だったし、このWolfensteinシリーズも最高。古き良きアーケードスタイルを踏襲し、とにかく動きと銃撃の取り回しの良さを追求する作りがよく手になじむ。 シングルゲームだったNEW ORDER、NEW COLOSSUSは他のゲームでは見られないような荒唐無稽だが丁寧なドラマも見どころで、それだけにこの二人coopというデザインに変わったYoungbloodにも大いに期待を寄せた。まずHotline MiamiのBGMを手掛けたCarpenter Brutを使った上のトレイラーがカッコよすぎた。

内容としては、安い値段なりには楽しめるが、薄いボリュームの中に無駄に課金要素をねじ込もうとした結果、無駄に遊びにくいアーマーの種類ごとに特攻武器が違うという仕様や個性のないミッションの連続という部分が気になった。オープンワールドを使ったやり込みのセンスは感じられないので、レールプレイを前提にしてほしい。それでもシリーズ伝統のド派手アクションと演出は健在で、ダレを感じる前に終われるボリュームなのも幸いしてサクッと遊びきれた。

今までFPSをやったことのない嫁のPC FPSデビュー作としてこんなハードコアな作品を選んでしまったことは申し訳ないと思っている(でもハードでクリアできた!)

 

Dead by Daylight (PC/Steam)

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 みんなで楽しく鬼ごっこ。ほどよくホラーでほどよくアクションで、ハイスコアを目指すが必ずしも明確な負けも勝ちもない敷居の低さがじわじわとはまる。チェイスの腕前を上げるのが楽しいのだが、結構キャラ対策が面倒な部分もあり。ドラマのある試合ができると続けたくなってしまうスルメゲーというところか。これも夏まではかなりやったなあ。

 

Apex Legends (PC/Origin)

 建築という要素を入れて限りなくシューターとしてのスキルの要請を緩めたカジュアル路線で老若男女を引き入れたのがFortniteなら、限りなくスポーツ系に近いハードコアなFPSとして再構築したことで既存のシューター人口を吸い上げたのがApex Legendsだろう。シーズン1と2の途中まではどっぷりハマった。Titanfallのデザインを活用したスピードとアクションの手触りの良さで思いっきり暴れ回れるのが楽しい。惜しむらくは新しいマップが遠距離戦主体で移動がダレやすいのと、アーマー制+バトルロワイアル系の性として特に序盤にどうしようもない詰みで死にやすく時間を無駄にしやすいところか。キャンプに徹して順位だけ上げても面白くないし、バトロワは体験が一定しないのが厳しいところ。

 

Daemon X Machina (Switch)

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アーマードコアと本作との違いは リッツカスタードとルヴァンの違いしかないと言いたくなるぐらいに中身がアーマードコアな良作。なのだが、新しいハードで新規層を発掘しようとしたのか、ストーリーやキャラクターはなんともいえない中途半端な尖りきれない凡百アニメのそれになってしまっているのが興を削ぐ。それでも持ち運びできるプラットフォームで本格的なハイスピードロボアクションが楽しめるのは素晴らしい。

 

Halo: Master Chief Collection (Halo: Reach)

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 長い時を経てついにPCにやってきたHaloシリーズ、MCコレクションを買えばこれまでのシリーズ全部付いてくるらしいが、まずはReachがリリースされたので一日でcoopクリアしてきた。スターウォーズと比肩する長い歴史に加えて、元祖お祭り大暴れcoopがPCでも楽しめるのは幸せとしか言いようがない。ジープに箱乗りし、グレネードは全部投げて、とにかく弾をバラまきまくるカオスな戦場。スパルタンという改造人間たちだからこそできるたった4人で仕掛ける戦争のダイナミズムは健在だった。

ReachはHaloの歴史の中で言うと、唯一スパルタン部隊が存在していたころの話なので、これ以降はマスターチーフしか残らないのだということも踏まえてプレイすると、コヴナントに蹂躙されるストーリーの深みを改めて味わうことができる。しかし、エイムアシストがきく世界ならまだしも、PCだとスナイパーが強すぎるなこのゲーム。

 

Blasphemous

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 メトロイドヴァニア系で初めて手にしたゲームで絶賛攻略中。南スペインのキリスト教文化をベースにしたゴシックとグロテスクの絡み合った美術があまりにも美しい。ホラーなのに魅入られるほど敵の挙動や背景が良いので、この世界に入り浸るために起動してしまうぐらい。ゴヤの世界を旅するゲーム、と紹介したい。