2015/01/14 Elegy for a dead world
もはや創作なのか消費なのか。
インディーズゲームの小部屋:Room#361「Elegy For A Dead World」 - 4Gamer.net
まさかの背景に沿って直接ストーリーを書き込む「ゲーム」というわけで、そもそも全篇好き勝手に書けるのはそれはもうただの創作なんじゃないかと思いつつ、物語を書くのがゲームになるっていうんならやってみようじゃねえかということでやってみた。
まあー感触としてはゲームではないですよね。これね。
だってまずインタラクティブ性がないもんね。書き込んだことによって何かがフィードバックされるわけじゃないし。ワークショップ経由で他のプレイヤーに読んでもらえるよーとか、それはもう単純に小説投稿サイトなんじゃないかという話なんですけどね。
アイデアは好きだけどね。ってか個人的にはどんどん新しいステージを用意してほしいけどね。これが例えば不特定多数のプレイヤーによって作られるリレー型小説!みたいな体であったらゲームと呼びうると思うけど。MO形式で、4人とかで執筆をリレーして、みたいな。(まあ書き上げたものがどこで評価を受けるかっていう報酬の問題があるんだけど)
ただ、小説を書くにあたってのアシストツールとしては結構よくできていて、同じステージでも戯曲モードとか英文法練習モードとか、さまざまなテーマが用意されているので、これから何かを書いてみたい人とか、書き方を練習したい人にとってはありがたいと思う。英語だけどね。1・2時間ぐらいでさくさくっと書けるようなボリュームだし。
とりあえずオーソドックスな「Byron星の時代」という設定で一篇書き上げたので掲載。基本的に最初の一行だけがゲームによるリードで、そこも改変して書き進めてる。色々文法が間違っているかもしれないが、もしわかる人は教えてくれるとありがたい。
Arh'du - the melted civilization
『Arh'du (アル・ドゥ):溶けた文明』
五億年前、この星は『アル・ドゥ』と呼ばれる種族の故郷だった。
アル・ドゥはこの星系で最も文明の進んだ種族だった。彼らは成功者であり、侵略者であり、そして絶対的な支配者だった。だが今となっては、彼らは数々の奇妙ながらくたを遺し、遠い神話と成り果てている。
彼らは支配下の星を『Gim'a』――今では『the Jade(翡翠)』と呼ぶ――という金属製の素材で覆いつくし、そこから数々のテクノロジーや兵器、建築物、そして種そのものを作り出した。
他の惑星は彼らの手に落ち、次々に『翡翠』の実験場へと造り替えられた。彼らの侵攻に反抗できるものは誰一人いなかった。なぜって?それは星そのものが相手だったから。
アル・ドゥが幾千もの『翡翠』を星に降らせ、『翡翠』がその土壌に触れると、『翡翠』はその星に刻まれた記憶を抽出し、その星に住む種族や社会を――アル・ドゥの高い知識と技能を上書きしたうえで――丸ごと複製する。誰も複製された者が誰か見分けることはできない。というよりも、誰もそんなことを考えもしない。彼らは『翡翠』という名の“恵みの雨”によって我々は進歩したのだ、と喜ぶばかりだった。
千年もの間、アル・ドゥの“帝国”は栄華を誇った。
『翡翠』は銀河中の知識と歴史を記録し、アル・ドゥはそれを星々を統治するのに用いた。それぞれの星には独自の種族と社会があったけれど、彼らの進化――最も根源的な「意志」そのもの――はアル・ドゥの手の中にあった。
高層建築はアル・ドゥ支配下の文明に共通した特徴だ。彼らは『翡翠』の生成工場を建て、それをオベリスクという、地上で最も高い塔から噴霧させる。オベリスクはそれぞれの社会における宗教的なモニュメント(教会のようなものだ)も兼ねている。
宗教のバリエーションというのは当然ながら膨大にあった。だがそのすべての存在意義は、究極的にはたった一つの教条に集約された。
――「繁栄を讃えよ」。まあ、誰にも反対なんてされないわよね。もちろんそれが続いている間は、だけど。
アル・ドゥによる統治に不可欠なのがこの『石笛』だった。
『翡翠』の砂がこの『石笛』の穴の中を通り抜けるときに、音が鳴る。とても大きくて耳障りだけど、どこか音楽のように聴こえなくもない。ちょうど誰かが巨大でボロボロのパイプオルガンで聖歌を奏でようとしているような感じ。その音で、アル・ドゥは星の状態を把握していた。
子供たちは歌い、大人たちは詩を書いた。
戦争、弾圧、虐殺……数多くの破滅が訪れても、諦めるものはいなかった。それどころか立ち止まろうとするものすらいなかった。進化し続けることこそが唯一にして絶対の答えだということを、彼らはあらかじめ知っていたんだ。
そして彼らはそれを疑わなかった。だから誰も悲しまなかった。彼らにとって、目に入るものはすべて、次なる進歩への光だった。
彼らは常に幸せだったのよ。
その一方で、町の目立たない場所や個室の一角には、時折彼らの宗教的シンボルを冒涜するグロテスクな絵が描かれることがあった。
アル・ドゥに支配されたものたちは決してアル・ドゥに立ち向かおうとはしなかったし、『翡翠』の力を疑うこともなかった。もちろん互いに殺し合うこともあったけど、オベリスクを攻撃することはついぞなかった。無意識のうちに自分たちが『翡翠』の子だとわかっていたのね。
でも……だとしたら、何故こんな絵が残っているの……?
しかし、余りにも繁栄の限りを尽くしたもののご多分に漏れず、数千年後に全ての終わりが来た。
文明は堕ちた。大地の底が抜けたのよ。
ある時、突然あらゆる『翡翠』が粉状に溶けだした。
地面が、建物が、そして人々が……『翡翠』を内包するあらゆるものが溶け、風に吹かれて消えた。
“本物の”大地でできたものは地上に残ったけれど、
生命は……どこにも残らなかった。
大地は新たな生命を生み出すのを止めてしまった。
星には、ただ風に吹かれる『翡翠』と植物だけが、生命の存在意義を忘れたかのようにそこにあるだけだった。
それはとても静かで、平和な世界だった。
そして何千年もの時が経って、原始的な建物がこの星に建てられた。
誰のかって?そうね……
“彼ら”は学んだことの全てを活かして、決して間違った進化をしないよう試みた。
“彼ら”は常に風に吹く『翡翠』の音を聴き、“祖先たち”の失敗を思い出した。
“彼ら”は絶対にそうした失敗を繰り返さなかった。
無限と喪われた生命たちは、アル・ドゥ――私たちの文明の再起のために役立てられた。
私たちには、
失敗も、
悲劇も、
後悔もない。
ためらう気持ちも、ない。
でも……それでも、彼らの死を悼まずにいられないのは、何故?