2014/12/31 音速スタッフロール
言葉の届かない場所にばかりいた。
2014年。実際毎週何かをしていた。
もういい歳にはなっちまいながらも、「人生」が手元に来てまだ2・3年しか経っていないので、やっと自分の使いこなし方がわかってきていろいろやってみた、というのが今年だったと思う。いろいろやってみた、途端にあらゆることが上向き始めた面白い年だった。今年きてるわー、を様々な局面で思った。
別に就職したところで何かが変わったわけではあまりなかった。収入が増えたのは小さいことではないけど、二十代になったら時間がないのは何をしてても同じだった。満員電車に肩を押し込むように、圧倒的質量で押し寄せ流れていく現在に自分をいかにねじこんでいくかという作業に変わりはなかったし、ねじこんでいけるだけの自分が手元にストックできてきていた時点で、十分にポジティブであることを受け入れていける条件は整っていた。
そんな中でもずっと、これまで通り「過ぎ去ってしまうもの」「顧みられないもの」をいかに拾って形にするかは考え続けた。過去のプレイバックではなく、未来を迎え入れることが、本当は何を記述すべきなのかを見極めるに当たって重要だと気付いた。
あるようでないものが好きだ。
もっさりと存在していて、そのくせ手を入れるといとも簡単に崩れ、なくなってしまうようなもの。それは急いで消費してしまってもいいし、逆にじっくりとその味わいを引き出そうと試みてもいい。いずれにしても、リアルに関係した途端に実体を喪って、印象だけを残してさっと過去へと流れていってしまう。対応が正しかったか否かを問う間もない。一切れのケーキのような、そういうものが好きだ。
そういうものを作るには、言葉だけでは全く足りなくて、もっと人間の多言語性――身体で発信できるメッセージ、ハイコンテクスト文化の中で行われる意味のマニューバ、感覚と自我の関係、定義の意義、それらについての理解が不可欠だということが分かったし、それによって着地すべき理想もどんどんと姿を変えていった。
まだそこへ着地することはできていないし、その過程を表すだけの力量もない。生きることを保留したくなる時もまだまだあるし、焦りと迷いとはいい加減馴れ合い始めてきたところだ。
人の人生を十年ごとに区切るとして、個別の自分が命をリレーしていく。十代生き残って、前半乗り越えて、今楽させてもらって、仕込んだものをまた次に渡していく。今ここに存在していること、何かができていなくても、それについて考え続けること、改善すること、着手すること。ミリ単位で、生活の範囲で修正をかけて、大鉈を振るう筋力がなくても、確実に触れ合った人を暖めていくこと。
焦れはする。「まだ元を取っていない」という叫び。それも長所と受け入れられる余裕を少しずつ充填している。どのような形式で、どのようなタイミングでそのエネルギーを適切に流し込んでいけるか、まだ模索は続いていて、悲しいけれども、人よりも長く踏ん張り続けて鍛えられた脚で、その気持ちも踏みしめて進みたい。
リアルな出来事でいうと、一番大きかったのはHESOMOGEこと川口忠彦さんの個展でギャラリートークをさせて頂いたことだろう。
第3回個展 終了いたしました : H E S O M O G E .com
二十代になってから始めた趣味も、しっかり自分事に紐付けて咀嚼を続けたときに、きちんとそれを好きな人に届く表現が生まれるんだなということを川口さんとのご縁に教えて頂いたと思う。
あのヴィーナス&ブレイブスの監督さんというだけであらゆる意味で自分にとっては神のような存在だった方と、親しくお付き合いさせて頂いて、美というものについて語り合い、検討することができた。そこからさらに素晴らしい出会いも広がって、過去も未来も深まり、味わいが出てきた。
重要なのは、そこにいるすべての人が勝負をかけている人だということで、異なる分野に立ちながらも、ある種の戦友として集ったということなのだ。また別々の戦場に戻っていくための酒場のような場。人はなんのためにあるのか、なんてそんな問いもすっ飛ばして、人はどの方向に行くべきかを見据えた人。言葉は停滞する。思考は入り組んでもたつく。それでもわれわれはわれわれである以前に進化し続ける種。理性はそれを観測し続けている。本能と付き合い、どこへどこまで行くのか。時代は確かに変わっており、それゆえの罠も、未完成のものも多い。だが強い意志でそれらを切り分けていければ、何もかも自分で決めることができるだろう。
溺れたがりにも守られたがりにもさよならをして、未だ移り気ではありながらも、それゆえの軽いフットワークを武器に追う。やっぱり物語を生成する人なんだよな、自分。なので来年もこのペースとリズムで、頑張っていきます。
皆様、今年はお世話になりました。
来年もよろしくお願いいたします。
遊んですぐ寝た。
そんな昨日のCDJは、遅めに出て早めに帰った。
もうほとんど貼るだけ。
坂本真綾「Be mine!」Music Video - YouTube
なんでロックフェスにいるんだ!?と思いつつ、良かったです実際。真綾さん、想像以上に動きまくる人だった。美しい声は心と体の姿勢から、というのが観ていてよくわかる。
本命。MCで言っていた通りかなり緊張気味だったようだけど、押し寄せる斬り付けるような音圧の中に一筋、布に刃を通すように透き通った佐藤さんの歌声が抜けていく。こんな時代にこんな「東京」を歌うバンドがいる、その事実に何かと感傷的になってしまうなあ。
TM NETWORK / Get Wild 2014(TM NETWORK 30th ...
やってくれました小室さん。ソロ、エレクトロ、マエストロってな具合でフロアを上げてから爆発→GET WILD。アレンジもロックフェスらしいギターサウンドを織り交ぜてきて、たまらない。まだ何もかも素直だった頃の音楽がまた鳴った。
大森靖子「きゅるきゅる」Music Clip [HD] - YouTube
ねごとが始まる前に駆け込みて観た大森靖子。
割と真っ当なバンドサウンドを呪詛のグラインダーにかける危ないライブ。全方位にカウンター仕掛けると壊れるしかないというパンクの極北みたいな、なんか、なんだ、とりあえず大丈夫なんだろうか……?ダメだな……でもいてくれないと困る……ロックフェスだもの……
この「女子」との絶妙な距離感を観てくれー!
そしてグルーヴ感を味わってくれー。
日本のロックが次の段階に来たことを感じさせてくれる、不思議なまでに調和の取れたアクトだった。