七梨乃手記

……あなたは手記に食い込んだ男の指を一本一本引き剥がすと、頼りない灯りの下それを開いた。@N4yuta

2014/12/29 あたしとロックを―CDJ day2

COUNTDOWN JAPAN14/15 初参戦。

 今年は音楽に身を捧げると決めた年だった。

 夏にフジロックに初参戦してから、今年どうしてももう一発フェスを仕込みたくて、CDJ後ろ三日券を買ってしまったのだった。

 かねてからロックフェスデビューしたいと言っていた子を連れて海浜幕張へ。いやー、流石に定番年越しイベント、空調も誘導もフードスペースの確保も完璧で、この上なく快適なフェスだ。きちんと時間を選べば音楽を楽しみながら旨い飯も食べられて座って休むこともできるので、安心して遊べるいいイベント。ひたすら感心してしまった。

 

 本日観たのは以下。


ゲスの極み乙女。 - 猟奇的なキスを私にして - YouTube

 初っ端からゲス。ナイスブッキング。ナイス入場規制。

 いやいや、ヴォーカルも演奏も実際手堅い手堅い、超ソリッド。当たるべくして当たったというか、当たって良かったと言えるバンドなんじゃないだろうか。絶妙な毒とサブカル感の入り口からストレートにポップへ抜けていくこの展開、今を象徴していると思うし、一番手がはまり役。昼飯を食っていったのに踊りすぎて終わった時には腹が鳴り始めていた。

 


ZAZEN BOYS - 泥沼 @ ボロフェスタ2013 - YouTube

 安定の諸行無常。今回の性的衝動はおしゃれクラブサウンドへ抜けて行ったので個人的に親しみやすかったwああスーツ。ああおやじロック。横にずれたサングラス。エスプレッソだよこれは。踊らされるのだよ。

 


[Alexandros]- Waitress, Waitress! (MV) - YouTube

 連れの推しで観に行った元[Champagne]こと[Alexandros]。

 普段はゴリゴリしたギターばかり聴いているので、煌びやかな音のシャワーみたいなサウンドは聴いていて癒される。イケメンサウンド、いい。Champagneの頃はそこそこ聴いていたけど、Alexandrosになってからはもっとキャッチーというか、王道な感じになった印象があって割と興味を惹かれる。今後も注視していきたいバンド。がっつり気合入れてライブやってくれるしね。

 


GRAPEVINE - 望みの彼方 (名盤ライブ『IN A LIFETIME』) - YouTube

 はい。渋くなりましたね本当に。一つ一つの言葉と音を丁寧に丁寧に刻んで、全力でなぞっていく音作り。移籍後の新アルバム期待。昔の曲も、今の曲も別々にすごく良いので、もっともっと聴かれて欲しい。ロックが人を救うとしたら、最も直接的にそれを実現しているのがこのバンドだと思う。本当にありがとう。

 


クリープハイプ - オレンジ - YouTube

 世界観。世界観!!!!!!!!

 貫録の入場規制。まあ青田刈りですよね。うんうん。

 ただライブはどうだろ……自分は空腹に負けた。しかし演奏は聞き惚れる。メロディーラインがね!もうね!

 


赤い公園 - 今更 - YouTube

 今日の個人的MVP。

 もうアルバム一枚聴いた時点できとるでこのバンド感がすごいよという状態だったが、あまりにもパフォーマンスが美しすぎる。力まず、構えず、ストレートに楽しさ、音楽の美しさを追求した姿勢。それができるロックバンドは実際とても少ない。ガールズバンドならなおさら難しいかもしれない。でも、ストレートでいい。ストレートであればいい。ロックを信頼すればいい。それが心底わかっている人間の動きだった。

 正直あまりにも美しかったので落ち込んだ(あまりにも良すぎるパフォーマンスを観るとキャパシティ超えた時点で心のブレーカーが落ちる)。

 えーと、来年ライブ行きます。

 

 


エレファントカシマシ「今宵の月のように」 - YouTube

 落ちて砕けた心をエイヤッと回収してくれたエレカシ。いつもすみません。『お前らなんて素直なんだ、なんて素敵なんだ、嬉しいぜエビバディ!!』『一緒に生きていくだろ!!』『金以外に大事なもんがあるかバカヤロー』などの正拳突きを食らって立ち直る。ありがとうございます。この48歳の全肯定はパワーがありすぎる。力押しすぎる。押し切られて元気になってしまう。

 それにしても、チャートが死んで久しい現代に、自分がまだまだ幼いころに好きだったバンドが今日もまた好きな歌を歌って、何千人という人間に手を振らせるって、本当にうれしいものだ。もっともっと若い世代にも知られていけ、広まっていけ。

 

 以上、フルコースの贅沢。

 雑食の自分でも、やはり故郷はロックだったのだと感じさせるには十分なラインナップ。ロックというやつはなんで、他ではケチのついてしまうストレートな肯定ってやつをあんなにも綺麗にやり抜けてしまうのだろう。スポットライトに照らされたアーティストと無数の揺れる手以上に美しい人間の姿など、あるだろうか。

 満面の笑顔で舞う歌手に屋根を押し上げる無数の手を観ていると、決して届かない美しい光が神輿のようにたくさんの人の手によってどこか遠くへ行ってしまうようで、寂しかったり愛しかったり、猥雑な感情が心をかき乱す。だから必死に手を伸ばしたくなる。

 過ぎ去っていく美を惜しんでいるばかりでなく、いつか自分もその光を手にするために、余所から見れば陳腐かも知れないストレートな愛の詩を、自分にコードとして刻み付けて歩いて行こう。

 

 連れの子も世界が変わったかのような充足っぷりを放出していて、嬉しくなってしまった。どんどん広がっていけ。音楽という多言語コミュニケーションは、ただそれがリアルに共有されることによって、より理解され、育まれていくのだから。

 いい一日だった。本当に、ロックはいいものだ。