七梨乃手記

……あなたは手記に食い込んだ男の指を一本一本引き剥がすと、頼りない灯りの下それを開いた。@N4yuta

2014/12/23 ~ずにはいられない

部屋を何で嵩張らせるか問題。

 川口さんKindleまじでいいよー、という話をして頂いて、早川文庫の電子書籍が半額セールを始めたということもあり、Kindle Paperwhiteを買ってしまった。

 

Kindle Paperwhite

Kindle Paperwhite

 

  値段的にギフト需要も高いようで、クリスマス向けに2000円引きクーポンも適用できたので、割といいタイミング。本格的に電子書籍デビューを果たすことになった。

 何しろ家の本棚が限界である。

 うちの部屋を埋め尽くす二大元凶、本と服。いずれももはや棚に収まっていない。収まれない。しかしよくよく考えてみれば、服はまだしも本はこうまで場所を取っておく必要があるものばかりでもない。自炊できるような環境があるならばそうしてしまうべきものもあるし、そもそも手元になくてもいいようなものもある。ここらへんの切り分けは、自分が毎月後先を考えずに本を増やしてしまう習性のために割と急務であって、物として持っておく必要のないと思われる書籍はガンガン電子書籍で仕入れていくべきだったのだ。

 そもそも、自分は公共の場でそうそう本を取り出さない。携帯も相当こっそり見る。外で本を読むといえば、カフェ等腰を落ち着けられてある程度のパーソナルスペースを確保できるところに限られる。自分が知っていて、認めた人以外には、自分がどんな本を好きかはもとより、何を考えているかすら明らかにしたくないからだ。ネットで好きなことを書くのはいいのかという話もあるが、リアルな存在と内面が紐付いているかどうかというのが結構大事である。

 そういう意味でも、iPhoneでも読めるKindle電子書籍は便利だ。落ち着いた場所では端末、それ以外では携帯でこっそり読み続けられる。

 自分はこれに加えて、人に貸し出したい本や、物として保持しておきたいもの、あくまで紙で接したい本を紙の本で所持する。

 この紙の本と電子書籍の振り分けが目下の悩み。

 特に小説。詩集なんかは紙の本で持つべきだろうが、割とこの先はそうでもないかもしれない。小説はもう本当に読了後に紙の本で持つべきだったと後悔するパターンが出てきそうだ。まあ仕方がない。読書の絶対量は多ければ多いほどいい。書店はそれぞれに癖があるし、通販は受け取るタイミングを計らなければならない。読める活字はなるべく早く読むに限る。

 

読み解けるものはすべて過去であるということ


自分で読みなおしても、どうかしてるマンガだなと思う。|【完全】さよならプンプン【ネタバレ】浅野いにおインタビュー|浅野いにお|cakes(ケイクス)

 

浅野 自分がマンガを描いてる動機のひとつは、自分が抱えてる疑問だとか不安だとかを解消したいんですよ。『プンプン』を描き始めた時の状況と今の状況とを比べると、今はすごくラクなんです。
 あの頃のあらゆるものに苛立ってる感じとか、いろんなものに対する不安はかなりなくなったので、描くことで解消したのかなと思います。

 例えば息を呑む感動。のしかかる苦悶。「現在」は常に言い表すことができない。

 肉体は常に理性の一歩先を行き、そのために、あらゆる人間は常に裸でモーメントに直面する。理性は意味を後付けするために機能し、その現実から精神を保護するために様々なロジックを構築する。時にはそのロジック自体が障害となることもあるが、基本的には絶えず重なりゆく「現在」との衝突のダメ―ジを補うために、われわれの理性は拡充されていく。

 そのためのツール(あるいは言語)は人によって異なる。好きなものを選べばいいが、最終的にはそれによってダメージの内容が記述されなければならない。人は障害のログを生成しなければそれに対処できない。そこに社会的、経済的価値があるかどうかはあまり関係がない。

 人は常にそのログを生成するための適切な言語を探している。「現在」との接し方は、自然とそうした言語の実験が主となる。その進捗のいかんによって、人生の質は大きく変わってくる。「~せずにはいられない専門的な人々」など存在しない。悩まない人など存在しない。人はよりよい記述のために努力し、生きていく。特別な、という意味のポエジーなど存在しない。記述せよ。誤っていたとしても、ロジックの更新を続けよ。それに勝る解決など存在しない。

 人は、少なくともこの時代においては、記述することで生存する。

 それが今日まで生き残ってみての実感でもある。